「ミイラ取りがミイラになる」そんなことが至る所で起きている。
明確な目標を持ち、周りのサポートも買って出ていたあの人が、気づけば休職。そして、離職。
魂は抜かれ、覇気も失った変わり果てた姿。
これこそが、”燃え尽き症候群”。
昨今、注目されている現代病の一つです。
早速、ご自身の火加減をチェックしていきましょう。
いくつ当てはまる?燃え尽き症候群17のサイン
MBI(Maslach Burnout Inventory)と呼ばれる燃え尽き症候群の診断テストを久保ら※1が日本版に作り直したもの。いくつ当てはまるか今すぐチェック!
※1 久保真人 (2004) 『バーンアウトの心理学 燃え尽き症候群 とは』 サイエンス社.
あなたが選択したのは、 0/17個 です!
さて、火はいくつ灯っていましたか?
燃え尽きないためにも、以降で症状についての理解を深めていきましょう。
燃え尽き症候群とは?
「燃え尽き症候群」
高い理想に燃え、仕事に真剣に取り組んでいた方が、自分がどんなに努力しても期待通りの結果が得られないとわかった時、その目標を見失い、精神的・身体的な「燃え尽き状態」になる現象。別名、バーンアウトとも呼ばれる。
この3つ!燃え尽き症候群の主な症状
MBI(Maslach Burnout Inventory)※2によると、燃え尽き症候群の症状は以下の3つに大別される。
- 情緒的消耗感
仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態。 - 脱人格化
1.の副次的要素。消耗した状態では、相手を思いやる余裕もなく、相手の人格を無視した配慮の欠ける行動をとってしまう状態。 - 個人的達成感の低下
2.の副次的要素。当然、今までのような成果は出せず、達成感が低下していく状態。
これらの結果として強い自己否定や休職、離職へと繋がる。
※2 Maslach, C., Jackson, S. E., & Leiter, M. P. (1996) & The Maslach Burnout Inventory (3rd ed.), Palo Alto, CA:Consulting Psychologists Press.
このように、心が消耗する(すり減る)というのが燃え尽き症候群の発端になります。
一般的なストレスにも似た症状はありますが、”情緒的”と「心の動き」に限定している点が特徴です。
そして、近年需要が増しているサービス業などの「感情労働」の従事者は特に、陥り易い傾向にあることがわかっています。「感情労働」は、かつての「肉体労働」と「頭脳労働」に並ぶ第3の労働形態として急速に需要が高まってきました。しかしながら、供給が追いつかず、少ない人的資源でサービスを回すなど、一人一人の負担は増してきました。また、お客様とのやりとりに際して、一挙手一投足に気を配ることが当たり前とされる風潮も、心をすり減らせてしまう一因と言えるでしょう。
要チェック!燃え尽き症候群の回復までの6ステップ
Bernier※3が、燃え尽き症候群の回復者20人を元にまとめた、回復までの6ステップを紹介します。
- 問題を認める
まずは、受け入れて心と向き合う。 - 仕事から距離をとる
物理的に距離を取る。休職期間は平均3ヶ月半。適切な判断を下すためにも、医師などの専門家への相談が有効。 - 健康を回復する
心を落ち着かせ、日常での楽しみを作るのが効果的。 - 価値観を問い直す
自分の人生のとっての”仕事”の位置付けを見直し、”本当にやりたいこと”を問い直す。 - 働きの場を探す
自分の価値観にあった環境を探す。 - 断ち切り、変化する
しがらみを断ち切り、新たな人生を再設計する。
被験者20人のうち、休職前の職場に復帰した人はたったの1人。残りの19人は、それまでの自分のキャリアを断ち切り、自分の価値観に従って新たなフィールドでの挑戦を選択しました。この6ステップは、新しいキャリアを切り開くための扉とも言えます。
※3 Bernier, D (1998) ‶A study of coping: Successful recovery from severe burnout and other reactions to severe workrelated stress” Work & Stress, 12. 50-65.
特に、人生100年時代に突入した現代では、”やりたいこと”を軸に人生設計していく考え方も浸透しつつあります。そのためにも、”人生においてこれだけは成し遂げたい”と心から思うことを明確にしておく必要がありそうです。
最後に
燃え尽き症候群は、「理想を掲げている上昇志向の人を襲う病」です。理想を掲げて、それに向かって突き進むことは、とてもすばらしいことです。ただ、「鹿を逐う者は山を見ず」という諺にもある通り、時には一歩引いて、現状を客観視してみるのも一つかもしれません。
全体を俯瞰して見ることで、自分の理想に対して、今何合目なのか、ゴールに対して方向は合っているか、横道に逸れていないか、などを再確認するきっかけにもなります。
時には、躓いたり、道を踏み外してしまうことは誰にでもあります。
そんな時には、身近にいる家族や信頼できる友人を頼りましょう。それでも、気分が晴れない場合は、専門家に相談してみるのも一つです。
足を運ばずとも、PCやスマホ一つで相談ができますので、灯火が消えてしまう前に、是非ともご活用ください。
また、被験者20人のうち、19人が選択したように、環境を変えるというのは有効な手段の一つです。勇気のいることではありますが、踏み出した一歩は大きいです。相談だけでも、現状の立ち位置を再確認することができるのでオススメです。
何事においても、適度な休憩は必要です。一旦足を止める時間がそれに相当します。そして、「相談する」という行為は、止めた足を大きく踏み出す、言わば「次への飛躍」の準備になります。
健全に、目標に向かって邁進する方が増えていくことを心より祈っています。