フィードバックと聞くと、どんなことを思い浮かべますか?
社会人であれば、節目にある面談を想像される方が多いのではないでしょうか?
ただ、「3ヶ月前のあの行動・・・」と言われても、今更感もあり、記憶にない可能性もありますよね。つまり、日常の中でいかにやれるかということがポイントです。
日常的なフィードバック、やれていますか?
「忙しい」、「時間がない」という言い訳が真っ先に浮かんだ方や、「やりたくないな」、「難しい」というネガティブなイメージが浮かんだ方もいるかと思います。
それも当然、受ける側は耳の痛いことであり、言う側も厳しいことを言わなくてはと思ってしまい、双方で苦手意識を持っているというのが現状ではないでしょうか?
ただ、誤ったフィードバックは、関係性の悪化だけでなく、相手の主体性を削いでしまう可能性もあります。正しいフィードバックの手順を知り、相手の改善や成長を促す方法を学んでいきましょう。
誤ったフィードバック例
まずは、例を見てみましょう。
(部下)はいっ!
(上司)今、お客様から、お叱りの電話が入ったぞ!
(上司)どうなってんだ!
これは、大勢の前で言われているという点において、本人だけなく、周囲にも悪影響を及ぼす可能性があります。
本人は、組織的にもダメな奴というレッテル貼りがされ、能力を発揮し難くなるでしょう。一方、周囲は、「あんなふうに言われないように、余計なことはしないでおこう」というように、思考を狭めてしまう可能性もあります。結果として、組織全体に悪影響を及ぼしてしまいます。
フィードバック:3つのSTEP
先の例のように、誤ったフィードバックは、自分が気になったことを言うのが目的になっており、単なる自己満足と言えます。
では、相手のためのフィードバックとは何か?
それは、より望ましい状態に向けた行動を、相手が起こすための支援です。
まずは、大きな流れを意識しましょう。
- STEP1:望ましい状態を模索する
- STEP2:模索した行動を起こさせる。
- STEP3:起こした行動を支援する。
一つ一つ詳細に解説していきます。
STEP1:望ましい状態を模索する
まず、“事実”と“客観情報”から現状を整理していきます。
自分の主観や曖昧な情報は極力排除し、正しい情報を集めていきます。そこで、SBIという指標を活用します。
B(Behavior):「どんな行動や振る舞いが」
I (Impact) :「どんな影響を与えたか」
S:A社のプロジェクトの時に、
B:担当部分のプレゼン資料の進捗が芳しくなく、
I :他のメンバーが連日、徹夜で手伝いをした。
SBIの中で、特に重要なのが、「I:Impact」です。これは、本人もわかっていないことが多く、周囲へのヒアリングを通して集める必要があります。ポイントは、どんなマイナスの影響があったかを伝えることで、「迷惑をかけたな」とか、「次は同じことを繰り返さないようにしよう」といった、改善意欲を掻き立てる効果が期待できることです。ここまでで、状況把握は完了です。
続いて、傾聴により、相手を尊重しながら、事の経緯をヒアリングしていきます。本人が知らずに起こしてしまったのか、誤解していたのか、その原因を探していく作業です。
▼傾聴スキルについては以下をご参照ください▼
そして、原因を見つけたら質問スキルで紹介した「思考の枠を広げる質問」である「「If(もし~なら)」という問いかけにより、理想とする状態を描きながら、解決策を模索していきます。
▼質問スキルについては以下をご参照ください▼
STEP2:模索した行動を起こさせる。
ここでは、模索した解決策を共有し、双方納得した上で、行動を促進していきます。
その時に有効なのが、質問スキルで紹介した「チャレンジや行動を促す:Where/How/When」で、
を共有します。
また、「周囲の視点を入れる:Who」で
というように、必要な支援について、合意形成をしていきます。
▼質問スキルについては以下をご参照ください▼
STEP3:起こした行動を支援する。
いよいよ、最後のステップです。行動の結果、望ましい状態に近づけているか、行動とその変化を見て、次の関わりを考えていきます。
変化がある時
まずは、変化に対して、承認を伝えます。ここで重要なのが、必ずしも結果に結びついていなくても良いという点です。改善に向けた本人なりの行動や姿勢が見られるのであれば、その行動に対して、承認してあげることが、今後の継続へと繋がっていきます。
▼承認スキルについては以下をご参照ください▼
改善や変化が見られない時
この場合、周りに与えるマイナスの影響や要因が理解できていなかった可能性が高いです。
改めて、SBIを収集して、フィードバックに立ち返ってみましょう。
改めてフィードバックする場合には、「前にも伝えたと思いますが、・・・」などとお説教にならないようにすることがポイントです。
要は、しっかりと相手を見ることが、何よりも大事です。
「以前にも言ったので、わかるだろう。」というのは、自分側の都合です。言葉が相手に伝わり、相手が改善されたかどうか、そこまでがフィードバックです。
補足
ここで、フィードバックと切り離せないのが、自身の怒りの感情のコントロール方法について2つ紹介します。
アンガーマネジメント
フィードバックをしたいことがある時の多くが、相手に対して何らかの怒りを感じています。
この怒りを感じたままフィードバックをしてしまうと、本人は怒りを表現したつもりはなくても、無自覚にその怒りは相手に伝わり、「怒りをぶつけられた」と感じさせてしまうことがあります。
結果として、相手を委縮させてしまったり、時には反感感情を抱かせてしまうこともあります。
怒りは、喜怒哀楽の感情の中でも、相手に与えるインパクトは大きく、たとえ1回でも、強烈な負の印象を与えかねません。
そのため、突発的な怒りに対して、対処法を身につけることが大事になってきます。
まず大事なのは、自分の怒りを自覚するということです。
まず自分が怒っていることに気づかないと、対処のしようがありません。日常で、自分の怒りにいかに気付けるか、その感度を上げることが大事です。
そして、この怒りを自覚できるようになったら、クールダウンをする。
その理由として、脳科学的に、怒りを感じる脳内物質は、10秒程度しか体内に残らず、分解されると言われており、怒りを感じた10秒をいかに稼ぐかがポイントになります。
10秒数える、その場から離れる、コーヒーを取りに行く等、この10秒クールダウンの選択肢をより多くもっておくことが重要です。
怒りを自覚すること、自覚したら、クールダウンする時間を取るという習慣をつけましょう。
しかし、これはあくまで対処療法に過ぎないため、根治療法になる方法を次に紹介していきます。
第一感情・第二感情
根治療法の視点としては、第一感情と第二感情というものがあります。
出来事に対して、自分に起こる感情
第一感情の結果、相手にぶつける感情
怒りの場合、多くは第二感情だと言われています。
つまり、“怒り”という第二感情の背景には、本当に自分自身が感じている第一感情があるということです。
例えば、上司が部下の仕事の進め方に対して、非常に厳しく、怒りの感情が前面に出るような指導をされてるケースを想像して下さい。
上司の第一感情は、(上司自身も自覚されていないかもしれませんが、)以下が考えられます。
・手塩にかけた指導も虚しく、変えることが出来ない、“不甲斐なさ”
・部下の指導に対して、自分自身の関わり方が悪いのではないかという“不安”
・自分の元にいたせいで、部下が出来ない奴になってしまうのではないかという“心配”
このように、上司は自分が怒っている時、その背景にある第一感情は何かということに思いを馳せることが重要で、部下も上司の第一感情に寄り添う姿勢が大事です。
例えば、「本当はすごく心配してくれているのを感じています。」というように、相手の第一感情をIメッセージで伝えることで、より深い相互理解の関係を作ることが出来るかもしれません。
これは、仕事だけではなく、家庭や親しい関係でも応用出来るので、是非使ってみて下さい。
以上が、フィードバックの手順です。
最後に
本来であれば、じっくり対話により解決策を見出すべき状況であっても、日常ではどうしても緊急対応しなければならないこともあります。
そんな時は一旦指示・命令などのティーチングでその場を収めることは大事です。
しかし、その後、フィードバックで相手の振り返りをサポートしたり、ラポール(相互信頼)の関係性を回復するフォローをすることも大事です。
そして、ここまでで身につけた「Do:実行方法」をひっさげて、「Be:相手の成長を願う気持ち」を持って接することが大切です。
つまり、判断に迷ったら、「相手のためになることか?」ということを自問自答してみてください。ここでの学びを日々実践して、よりよい関係性をつくっていただけたら幸いです。