「芸は身を助ける」
一芸に秀でていれば、それが生計の助けとなる広辞苑
ドラマでよく、家庭円満な証として描かれる、”出勤時に妻が夫のネクタイを結び、玄関で見送る”という1シーンがある。
まるで、時間の流れが緩やかになっているのではないかと錯覚する世界観だ。
サラリーマンの方なら、誰もが一度は憧れるシーンではないだろうか。
ただ、現実はどうだろうか?
目覚ましでハネ起き、紛争跡地のような髪を整え、蓋をした胃に朝食を詰め込み、歯を磨き、着替える。
朦朧とする意識の中、これだけのステップをこなさなければならない。
例えるなら、濁流に流されながらも必死にもがき、かろうじて息をしている状態。
そこにロマンが介入する余地はない。
ましてや、朝から元気100倍のモンスターもチェックポイントで待ち構えている。
幸いなことに、モンスター君は食事に夢中で、余計なことをしなければ、何事もなくやり過ごせることが多い。
ライオンの横を忍び足で過ぎ去るような感覚だ。
朝は、食パン1枚、コーンフレーク1カップ、ヨーグルト1カップ、ヤクルト1本を食べている彼の横で、私は、食パンを静かに1枚頬張る。
これが朝の私の精一杯。
食べ終えたら、歯を磨き、別室で着替えをする。
その頃には彼も朝食を終え、「ドドドドド」という地鳴りと共にやってきて、笑みを浮かべながら私の目の前に立たずんでいる。
「どうしたの?」と聞くと、
ベルトをやる!
と答える。
なぜか、ベルトを締めるのが楽しいらしい。
ベルト穴にフックを通し、ベルトの余った端の部分をズポンに通す作業を担当する。
これを断ると、出勤は15分遅れる。
そのため、小さなスタイリストにベルトを委ねる。
少したどたどしさはあるものの、しっかり役目は果たしてくれる。
そして、小さな手に「行ってきます」のハイタッチをして家を出る。
何とも愛らしい奴だ!
ここまでが朝のルーティーンだ。
テレビ関係者の皆様、
家庭円満のニュースタンダードとして、この1シーンはいかがでしょうか?
そして、最適な子役はここにいます!笑