突如、社会に放り出される入社1年目。
道しるべのない迷路を彷徨っている方も多いだろう。
社会では「正解のわからない問い」と向き合う。それも相手は人。教科書のように「必ず正解がある」とも限らない。教科書相手とは訳が違う。世話焼きな先生もいない。
自らきっかけとなる行動を起こし、もがきながらも自分なりの正解を探す作業と言える。
社会での振る舞い方を懇切丁寧に教えてくれる人はいないからだ。
ただ、諦めるのはまだ早い。
そんな悩める新人の皆様の道しるべとなる心得を7つ紹介する。
今すぐ実践できるものばかりだが、意外と習慣化できている人は少ないことに気づくだろう。
早速、”デキる奴”の階段を駆け上がっていこう!
仕事を振られた時に確認すべきこと
上司:○○の報告資料を作っておいてね!
部下:承知しました!
「うん、うんよくある」と思った方は、既に落とし穴にはまっている可能性があります。
・この報告資料は誰が見る?
・何がどうなれば上司は満足する?
・いつまでにやれば良いのか? 等々、次々と疑問が沸き起こってくるでしょう。
すぐに、依頼主に確認出来れば良いですが、会議や年休、出張等で、必要な時に、十分に確認する時間が確保出来ないことはよくあります。慌てふためくその瞬間にも、大切な時間は湯水のように流れていきます。
こうなったが最後、時間の浪費のみならず、お客様への納期やプロジェクトの進行にも影響を与えることにもなり兼ねません。結果、組織全体として、誰も得しない進め方になってしまいます。
それでは、どうすれば良かったのか!?
上司から仕事を振られた時に、確認すべきポイントが2つあります。
先の例では、
ゴール:何がどのような状態になったら終わりなのかという完了条件
制約条件:ヒト、モノ、カネ、ジカンなどのリソーセス(資源)になります。
サッカーで例えると、 「仕事を振られる」のは、 「パスが回ってきている」ということです。ボールが飛んできて、自分がボールを預かる。その時に、「ゴールはどちらにあるのか?」、「今はどっちが何点差で勝っているのか?」、「残り時間は?」といった基本的な状況を把握出来なければ、チームに貢献することはできません。初心者であっても、ゴールの位置を確認せずに、サッカーをする人はいないでしょう。
しかし、ビジネスではそういうことが日常的に起こっているのが現状です。ボールを持って何となくフィールドを走り回り、汗をかいているだけで、「仕事をした」と思い込んでいるのです。
このような状態に陥らないために、まずは、この「ゴール」と「制約条件」を確認する癖を付けましょう。これ以外の情報は、些末な部分であったり、実現手段のため、自分で考えることが重要です。あれもこれも聞き過ぎるのは、逆に”勘所が悪い“と思われてしまうので要注意です。
(内容にも寄りますが)「ゴール」と「制約条件」を確認するだけであれば、せいぜい15分で済みます。このプロセスを踏まずに回り道するか、このプロセルを踏んで効率的に進めるかはあなた次第!
シンプルですが、効果は絶大です。
「ファクト」と「オピニオン」を区別する
Fact(ファクト):事実 / Opinion(オピニオン):意見
上司:○○の会議の結果どうだった?
部下:提案した内容は理解してもらえましたので、このまま進めます。
このような報告では、“デキない奴“と判断されかねません。
部下としては、「上司に責められたくない。」、「マイナスな報告はしたくない」と思うのは当然です。しかしながら、ポジティブに見せようとしたり、その場をやり過ごそうと曖昧な報告をするのは、かえって逆効果になります。
表情やイントネーションから、上司もごまかそうとしているのはわかります。「自分を欺こうとしている人」と捉えられてしまっては、信頼は地に堕ちます。
それでは、どうすれば良かったのか!?
話しの構成にポイントがあります。
上司が真っ先に聞きたいのは、ファクト(事実)です。ファクト(事実)を積み上げながら、次の作戦を考えるためです。また、ファクト(事実)から話始めてはいるものの、どこまでがファクト(事実)でどこからがオピニオン(意見)なのか曖昧では意味がありません。聞き手が、明確に区別出来るように、「ここからは私の考えですが」などと、一言添えてオピニオン(意見)に繋げてみましょう。たちまち“デキる奴”の仲間入りです。
欠勤するなら、仕事の状況を報告
突発で仕事を休む時に、一生懸命言い訳をする人がいます。
部下:昨日遅くまで〇〇していたせいか、今朝体調が悪く、仕事を休ませてもらいたいのですが・・・?
上司:はい、わかりました。
会社を休むためには、“正当な理由”が必要だと思っているのか、
はたまた、自分が怒られないための、自己防衛なのか理由はわかりません。
ただ、上司は、飲みすぎ、体調不良、電車の遅延だろうが、言い訳に興味はありません。
それでは、どうすれば良かったのか!?
伝える内容にポイントがあります。
今日あなたが休んだことで、仕事に支障が出るかどうか、出るのであれば、どうすればそれが防げるか。気にしているのはそこだけです。
休む時に、自分の気持ちを優先させてしまうのか、上司の視点で物事を考え、必要な情報を伝えられるかで差がつきます。よく言われる「自分の役職の2つ上の視点を持て!」というのにも通じる部分はあるかと思います。
上司もある意味で、あなたというプロのサービスを買っている「お客様」です。
自分本位ではなく、「お客様視点」で行動出来るかが、問われています。
意見を出す会議ではファーストペンギンを目指せ
上司:○○についての意見出しをします。意見がある方は自由に発言をしてください。
部下:・・・(沈黙)
フリーディスカッションの出だしからロケットスタートを切れるかどうかで、実りある会議になるかどうかは決まります。ロケット(優れた提案を出す存在)になるのは難しくても、優れた提案を引き出す起爆剤にはなれる方法があります。
それでは、どうすれば良かったのか!?
提案のタイミングと質にポイントがあります。
ここで、意見を出す会議に有効な「マクドナルド理論」を紹介します。 [Jon Bell,2013]
つまり、行き詰まりがちな会議を活性化するには、口火を切る人が必要で、それも的を射た提案よりも、「実行可能な提案のうち最低品質」が良いとのこと。
具体的なイメージを与えることで、議論の土台を作り、ディスカッションを加速させるだけでなく、その最低のアイデアを実行しないために、周りも脳をフル回転して、より良い提案を出そうと考えるようになります。
最初にマイクを握る人の力量によって、次に歌い易くなるか、歌い難くなるかが決まります。最初がオペラ歌手のような声量・歌声だったらどうでしょうか?きっと、マイクの譲り合いになるのが容易に想像できるでしょう。
一方、最初が、決して上手くはないが、ノリとテンションでその場を盛り上げるように歌ってくれると、次は入れ食い状態になるというものです。
そのため、口火を切る役は非常に価値が高いとされています。この役を取りにいかない手はありません!突拍子もない最初の意見をお待ちしています。
出世したければ「書く」
上司:○○の会議の議事録お願いね!
部下:は、はい…(面倒だなぁ)
このように、議事録をとることを嫌がっていませんか?
若手が「出世街道」を歩んでいくための、一番の近道が「議事録」の作成です。議事録を通じて、どう振舞えるか。それが会社人生の鍵を握ります。
上司は、新人の議事録を見る事で、その会議での理解度をチェックしています。
逆に、新人からすれば、上司に自分の理解度をアピールするチャンスになります。
議事録では、情報の整理力、編集力も試されるため、情報が整理され、うまく編集されていれば、さらにポイントはアップするでしょう。あくまで、自分に返ってくるということです。
ただ、これも効果のほんの一部に過ぎず、実は組織全体へも影響を及ぼす行為でもあります。
オンライン会議で移動時間が短縮された一方、容易に会議設定ができてしまう性質上、招集される会議の数は増えています。当然、議事録がなければ、会議に出席しない限り情報は入ってきません。しかしながら、議事録により、不参加でも効率的に会議内容を確認することが可能になります。これぞ、“時間を生む効率化”の最たるものです。
必ず議事録をとる人がいる会議というのは、「会議への出席」か「議事録確認で良いか」という”選択肢”を会議招集者に与えることができます。
新人の雑用と思われがちな議事録の書記は、上司へのアピール以上に、同僚の時間を生み、ひいては組織の効率化に繋がる重要な役割なのです。
このように、「書く」というスキルは”強力な武器”になります。
これでも、議事録を必ず書く人に名乗りをあげる以外の選択肢がありますか?
議事録による印象操作
さらにもう一つ。
議事録の内容には、誰かの意図が必ず入ります。
「誰かの目線で、何らかの意図をもって書かれている文章」ということです。
この誰かは、上司から内容についての指示を受けない限り、書記のあなたです。
「この人がこう発言した」という事実は一つです。しかしながら、切り取り方次第では、失言にすることも出来るのです。芸能人や政治家が炎上する理由の多くがこれに当たります。
”陰の支配者”と言っても過言ではありません。
書記が、A案支持派であれば、議事録の1ページ目にデカデカと、「A案に決定」と書くでしょう。逆に、B案支持派であれば、1ページ目には散々、A案の反対意見を書き、最後の最後に、「A案という方向で模索することになった。」と書く。後者では、読み手に、A案に決まったものの、「前途多難で問題山積みだな」、「ひっくりかえる可能性もあり得る」といったネガティブなイメージを醸し出すことができるのです。
それくらい議事録は重要な存在だと理解しておくだけで、ビジネスライフが大きく変わってきます。
丸投げされた仕事に対するマインド
丸投げされた案件に対して、若手が頑張って資料を作成しても、起案者が上司の名前になることがあります。
【よくあるシーン】
部下:俺が作ったのに、何もしていない上司が名前だけ出してズルい!
部下:若手をこき使って上司は楽をしている。
上司:(薄ら笑い)
いわゆる、上司に手柄を横取りされた状況です。「この悪代官め!」と思う方も多いでしょう。しかしながら、この状況はチャンスです。
要は、発想の転換です。
起案者が上司であれば、失敗したり問題が発生した場合の責任は上司にある。つまり、真の起案者である自分はその資料作成においては、無限の自由を得ている状態。こんないいことはありません。
丸投げ仕事の内容や資料に、もしダメ出しをされたら、「何がダメだったんだろう」というように学びのチャンスを得ます。逆に、そのまま通ったら、自分の思い通りのことが運びます。どちらに転んでも「おいしい」のです。
白紙の小切手を渡されて、「さぁ〜自由に金額を書いてくれ!」という夢のような状態です。
「丸投げされた」ということは、「自由を得た」と思うと少し気分が晴れませんか?
最後に
世界で最も面白いチームスポーツとしてのビジネスを、満喫しながら生きていくのか。
それは全部、これからのきみにかかっています。
by 田端信太郎
<参考文献>
田端信太郎(2019)『これからの会社員の教科書』
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