社会人にとって、楽しみの一つのボーナス。
会社選びの一つの基準でもあり、家計の頼みの綱だったりもする。
そもそも、ボーナスというのは、企業が利益を上げたときに、従業員にその一部を還元するために支払われる一時金。
ラテン語が語源とされており、「いい」という意味の「ボヌス」が派生して「ボーナス」になったと言われている。
月々の給与との違いは、”査定”という要素が色濃く反映されるという点。
頑張った人に報いることで、更なる頑張りを引き出すための先行投資。
つまり、「お金を与えれば、人は頑張る」という前提での考え方。
確かに、一理あるのだが、”本質ではない”というのが、今回のお話。
早速、お金とモチベーションの世界に足を踏み入れていこう!
「社会的世界」と「金銭的世界」
私たちは言わば、2つの世界に住んでいる。
- 人との社会的関係性や思いやりを重視する「社会的な世界」
- 金銭で物事を捉える「金銭的な世界」
思考実験
想像してみてください。
送る or 送らない
その次に、
送る or 送らない
前者では、「何も貰わなくても喜んで助けよう」と思っていたのに、後者で”お金の要素”が加わると、「助けよう」という気持ちが薄れてしまったのではないだろうか?
実例
実際に、アメリカで「落ちこぼれゼロ政策」を実施した時にそうしたことが起きた。教師は元々子どもが好きで、教育のことをしっかりと考えている人がなる職業だろう。
それなのに突然、「生徒の成績を上げたら、報酬を数百ドル増やします。」と言われた。
教師達は、「散々苦労しても、それしか給料が増えないのか」とガッカリして、逆に教育の質が落ちてしまった。
社会的なモチベーションと金銭的なモチベーションは共存できないという先ほどの例と同じだ。
確かに、お金の要素があることで、何かの行動をしようと思う時はあるが、最初に社会的なモチベーションで動いていたのに、後からお金の要素が加わると、当初のモチベーションは消えてしまう。
よく、「頑張りや成果に見合った報酬」という名目で、ボーナスの査定幅を増やす企業も増えている。ただ、社会的なモチベーションを蔑ろにしてしまっては、狙った効果は出せないということだ。
実験
半導体工場で実施した有名な実験を紹介する。
ある半導体のチップを作る従業員の仕事のサイクルは8日(勤務時間12時間/日)。
4日連続勤務をして、4日連続休暇というサイクル。初日には目標達成者に、ボーナスを支給。
上記の工場に協力してもらい、報酬とモチベーションの関係を探るための実験を計画した。<ボーナスの条件>
従業員を下記の4グループに分けて、それぞれの成果を観察した。
・あげないグループ(基準)
・あげるグループ
・お金(金銭的な報酬)
・ピザクーポン(社会的な報酬)
・上司からの感謝のメッセージ(社会的な報酬)
ここで問題!
続けて問題!
正解は、「ピザクーポン」と「上司からのメッセージ」
興味深いその翌日の結果だ。あるグループでは、残存効果が見られたのだ!
果たしてどのグループだろうか?
「お金」は、インセンティブ(動機付け)を提示されない「あげないグループ」よりも下がるという結果で、「上司からの感謝のメッセージ」は効果が持続するという結果になった。
お金というのは大きな要素であることは疑う余地はない。ただ、「この作業で、いくらの報酬」ということを認識した途端、報酬と労力を天秤にかけてしまう。また、楽して稼げるような場合でも、その権利を放棄するということを以下の実験では示している。(詳しくは詳細はこちらをご参照)
つまり、「金銭的なモチベーションだけでは人は動かない」ということだ。
まとめ
- 最初に社会的なモチベーションで動いていたのに、後から金銭的な要素が加わった場合、当初のモチベーションは消えてしまう。
- 直感的に金銭を与えれば、モチベーションが上がると考えがちだが、金銭を渡すと人々は計算高くなり成果が下がる事さえある。
- 社会的な報酬(上司からの感謝のメッセージ)には、残存効果が見られる。
参考:Dan Ariely 『Payoff: The Hidden Logic That Shapes Our Motivations』