なぜ、業務改廃は進まないのか?|上司と部下の心理を徹底分析

無造作 Mind recipe

業務改廃…もはや耳にタコができている方もいるかとは思いますが、一向にその恩恵を受けていないと感じていませんか?

口では簡単に言えますが、実際にはものすごく難しいことなのです!
今回は、なぜ、改廃が進まないのかについて、“捨てる”ことの難しさという観点から、考えていきます。

上司編

自分のスタンスを容易に変えられない心理

まずは、上司側の難しさについて考えて行きます。

突然ですが、頼れる上司とはどんな方でしょうか?

一つは、筋が通っていて、方針や態度に一貫性がある、つまり、“首尾一貫”している人柄が挙げられます。

この“首尾一貫”しているというのは、ピラミッド組織において、上に行けば行くほど、重要度が増すスキルで、裏を返せば、そのスキルを兼ね備えているから、上に上がっていくとも言えます。

しかしながら、この長所が、 “捨てる”という判断の足かせになることがあります。

人は、「判断を下し、一度立場を示すと、一貫した行動を取り続けたい」という心理が働きます。“コミットメントと一貫性の原理“と言われますが、一度示した立場によって、自身の行動が縛られてしまうのです。

元々、”首尾一貫”している人であれば、呪縛に囚われているような状態でしょう。
また、日本には発した言葉には神秘的な力が宿るという、言霊(ことだま)という概念がありますが、この正体は、一貫性の原理なのかもしれませんね。

投資してしまうと後に引けない心理

追い討ちをかけるようですが、変えたいルールの歴史が深い程、そのハードルは上がります。

これを”サンクコストバイアス“と言い、「すでに支出され、どのような意思決定をしても回収できない費用(お金だけでなく、時間、労力、感情も含む)がある場合、人は合理的な判断が出来ず、それを無駄にする決断が下せない」ことを言います。

これは、“損失回避“という認知バイアスに起因しており、「得る喜びよりも、失う怖さの方を強く感じてしまうため」です。課金したサブスクをやめられない、投資で損切りが出来ないというのが、この例です。

これが、最初から反対の立場で、時間も費やしていない若手と、時間を費やしてしまっている上司間で意見が割れる一つの要因です。

日本人特有の行動心理

さらに日本人は、「自分が損をしてでも、他人をおとしめたい」という嫌がらせ、通称“スパイト行動” が諸外国と比べて、突出して多いとされています。

コロナ禍における“自粛警察”がいい例で、他人が自粛せずに得をするのが許せず、自分が損する可能性もかえりみず、他人の揚げ足をとり、痛烈に批判する行動です。

パワハラ、モラハラ等の、根性論や美徳を振りかざして他人を追い詰める行為も、その一種とされています。

「自分達はこれだけ苦労してやってきたのだから、あなたも同じように苦労するべきだ」という心理で、以下のフレーズもまさにそうです。

  • 「昔は、残業360時間なんて・・・」
  • 「議事録は手書きで書いていたのだから・・・」
  • 「ITツールで便利になったのだから・・・」

過去のご苦労はお察ししますが、スパイトは伝播し、負の連鎖を生みます。時代の変化に合わせて、前を向いて、歩んでいく為に、是非お力をお貸しください。

以上が、上司側の立場での「捨てる」ことの難しさです。心理的に、なかなかハードルが高いということがご理解いただけたかと思います。

解決方法

それでは、解決方法を2つご紹介します。

1.ゼロベース思考

自身の知識・経験・価値観に基づく過去の事例やルール等が、思考の幅を狭くし、新しい発想を生み出す足かせになります。

何かを始めた時と、今とでは、人の価値観や取り巻く環境は、確実に変化しています。一旦前提を取り払い、“今、本当に必要なこと”を再考してみてください。それが今にあったやり方です。

2.オポチュニティコスト(機会費用)の意識

他方を選択していたら、得られたであろう、逃してしまった利益のことです。

例えば、やり方を少し変えて、効率的に働くことで、趣味や家族との時間など、あなたにとって大事なことに充てる時間を確保できます。一方、従来通りのやり方にこだわり、無駄な時間を消費してしまえば、大事なことに充てる時間は削れてしまいます。つまり、得られたはずの利益を失うことになります。

古いものに縛られることで、新しいものと接する機会が失われてしまいます。古いものを捨てることで、新しいものが入ってくることもあります。

部下のマインド

依頼を断る

また、ここからは、部下としての“捨てる“ことの難しさについてです。

よく耳にする会話がこちらです。

  • 「会社員だから、上司から振られた仕事をやるしかない。」
  • 「無駄な作業を捨てろと言われても、上司から与えられたものはどうしようもない。」

ここで考えていただきたいのは、“判断”と“関係性”は別だということです。

頼みを断るという“判断”が、相手との“関係性”を壊すことだと思い込んでいませんか?

「依頼を断ること」と、「上司を拒絶すること」は何の関係もありませんよね?

この2つを分けて考えることで、思考は研ぎ澄まされ、冷静に判断することが出来ます。

しかしながら、時には断ったことで、上司から怒られることもあるかもしれません。

その時は、“上司を説得”すれば良いのです。大事なのは、“その依頼を断ることで、個人とチームにどんなメリットがあるか”ということです。

例えば、「今は別の仕事を優先すべきだと思います。理由は○○です。それでもこちらの件を急いだ方がよろしいでしょうか?」と説明し、納得してもらいましょう。

個人の生産性が上がると、組織の生産性も上がり、ひいては会社全体にメリットがあるということを合理的に説明し、伝えれば良いだけです。そうすれば、一度怒った上司も納得し、味方になってくれることもあるでしょう。

参考とすべきGoogleの生産性

実際のところ、本当に優秀な上司は、NOと言うことの重要性を理解しています。そのため、あなたがNOと言ったことで、怒るようなことはまずないでしょう。むしろ、理由なく怒るくらいならその方は優秀ではないので、無視しても構わないでしょう。(あくまで無視するかは自己判断でお願いしますね)

以上のことを踏まえて、Googleの生産性の考え方に触れようと思います。

Googleには、10xという言葉があり、今の10倍の成果を上げようとしている企業です。改善に改善を重ねるという発想ではなく、一足飛びに10倍です。

1998年に創業してから、20年近くで、企業価値は15兆円を超えており、今尚成長を続けています。

これは、Googleの社員が誰よりも効率的に、“楽“に働けるように工夫を凝らしてきたからに他なりません。それも1分1秒を短縮するというレベルの工夫ではなく、10倍の飛躍を目指すために、過去の延長線上の発想ではなく、仕事の仕方そのものを見直してきた成果です。

“捨てる”ことは、これほどまでに生産性を高めることが出来るという一つの証明です。不要な仕事を捨て、やるべきことにフォーカス出来れば、生産性は飛躍的に上がります。

前例のない仕事をするために

それでは、「明日から10倍だ!」と意気込んで席を立ちかけた方、もう少しお付き合いください。このように、圧倒的な成果は、既存の枠組みの延長線ではなく、前例のない仕事からしか生まれません。

しかしながら、前例のない仕事をしようとすれば、前例主義の組織と軋轢を生むこともあるでしょう。Googleは、上司からの仕事を部下が断ることは、普通のことで、上司もそれを理解しているそうです。その行為が、生産性を高めるということを、上司が理解しているからに他なりません。

残念ながら、社内ではそのような風潮はあまり見られないのではないでしょうか。このように反論をしてくる部下を好まない上司も少なくないでしょう。

そのため、まずは下準備が必要です。

  • 日ごろのコミュニケーションの中で、上司と良好な関係を作る。
  • 仕事の中で、「あいつの言うことは的を得ている」と思ってもらえるように努める。

「あいつは信頼できるし、出来る奴だから、やりたいと思ったことをやらせた方が成果が出る」と、思われる人間になることです。

当然ですが、成果も全く出せていないのに、仕事を断ることは出来ません。

まずは、与えられた仕事で成果を出して、信頼を積み重ねる、その上で仕事を断ることによって、さらに、生産性を上げて、信頼を積み上げていくという、好循環を作ることが必要です。

最後に

そのような人達が多数派になった時、組織としては大きく変わっていくと思います。

あなたの行動が、その革命の一歩になるかもしれません。

<参考文献>
ロバート・B・チャルディーニ(2014)「影響力の武器」

影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか [ ロバート・B・チャルディーニ ]

価格:2,970円
(2021/9/30 00:34時点)
感想(27件)


ピョートル・フェリクス・グジバチ(2019)「ゼロから“イチ”を生み出せる!がんばらない働き方」

ゼロから“イチ”を生み出せる! がんばらない働き方 [ ピョートル・フェリクス・グジバチ ]

価格:1,540円
(2021/9/30 00:35時点)
感想(2件)


グレッグ・マキューン(2014)「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする [ グレッグ・マキューン ]

価格:1,760円
(2021/9/30 00:35時点)
感想(19件)

 

▼ポチッと応援お願いします▼
にほんブログ村 経営ブログ 組織・人材へ
にほんブログ村
タイトルとURLをコピーしました