ストレス社会と呼ばれる21世紀。「労働安全衛生法」が改正されて、労働者が50人以上いる事業所では、2015年12月から、毎年1回、全労働者に対して、「ストレスチェック」の実施を義務付けるなど、ストレス予防の重要性は年々増しています。
そんな現代において、”ストレスとどう付き合っていくか”を考えていきたいと思います。
あなたはいくつ当てはまる? ストレスチェック(12のサイン)
ストレスを抱えることで起こる症状をまとめてみました。いくつ当てはまるか今すぐチェック!
あなたが選択したのは、 0/12個 です!
いくつ当てはまりましたか?
これからストレスとの付き合い方を学び、できるだけ早くストレス解消をしていきましょう。
そもそもストレスとは?
「ストレス」とは、環境の変化や怪我などによる外的刺激(ストレッサー)によって、心や身体が歪んだ状態。名付け親は、カナダの生理学者 ハンス・セリエと言われています。
1. 「物理的ストレス」
温度(暑さや寒さ)、光、騒音、悪臭など
2. 「生理的ストレス」
病気や怪我など
3. 「心理的・社会的ストレス」
職場や家庭の人間関係から生じる葛藤や不安、恐れ、焦り、不満、怒り、緊張など
こうしたストレスが人間の体に生じると、それを解消しようと防衛反応が働きます。それにより、ホルモン分泌異常が起こり、様々な不調を引き起こしてしまうのです。
ストレスを活力へ
一般的に悪のイメージを持たれてしまうストレスですが、良い面もあります。
”適度なストレスは、頑張る活力になる”ということです。
ストレスを感じれば、それを解消しようとする反応が起こります。
否が応でもアクション(行動)を起こすきっかけになるのです。
つまり、ストレスは付き合い方次第では、行動の原動力にもなるということです。
「良薬口に苦し」という諺にもある通り、受け入れるのは難しいですが、本人のためになるということです。
ただし、”頑張り過ぎ”には注意が必要で、血圧の上昇により脳や心臓への負担や偏食、睡眠不足などの二次的なストレスを生み出す可能性もあります。薬と同様で、あくまで、”適量”ということを心に留めておくことが必要です。
無自覚に忍び寄るストレスの魔の手
現代は、ひと昔前とは比べものにならないほど、快適かつ便利になりました。PCやスマホ1台あれば大抵のことができてしまいます。ただ、その結果として人間が本来持つべき感情や感覚を保つことが難しくもなっています。かつては見られなかったテクノストレス※1と呼ばれる、「コンピュータ技術に適応できないという不安や、依存度が高まることによる不安」など、ストレスとなる要因は増えています。
※1 山室栄三、三浦正悦、横田等、山崎了司、中野義彦「H101 VDT関連用語の適切な使用 : 「眼精疲労」と「テクノストレス」 : VDT健康影響関連情報の公開(1)」『産業衛生学雑誌』第47巻0、2005年、 421頁
厚生労働省の調査からも、精神障害の労災補償支給決定件数(業務上の労災認定)は年々増加し、利便性とは相反する結果となっています。そして、2020年には過去最高を記録しており、自殺(未遂も含む)も18年で約2倍の件数になっています。
また、同省での労働者のストレスを調査した結果によると、新型コロナウイルス感染拡大前後の2018年と2020年では、労働者のストレスは減少傾向にあるというデータもあります。
年齢階級別に、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)についてのストレスを見ると、60歳以上の階級を除いては減少傾向にあります。リモートワークが加速し、物理的な距離を取れるようになったことで、心的負荷が低くなったとも考えられます。
以上の3つのデータをまとめると、
- 精神障害等(自殺も含む)での労災認定件数は増加傾向。(2002年〜2020年)
- ストレスを感じる労働者は減少。(2018年〜2020年)
- 対人関係でストレスと感じる労働者は減少。(2018年〜2020年)
ストレスを感じる労働者の減少に反して、精神障害等の件数増加の背景には、無自覚にストレスを溜め込んでしまうという理由が考えられます。昔は、体罰や人前での叱責など、”目に見える”ストレスが多く、本人ないしは周囲の方も気付きやすく、早めの対処ができていたように感じます。一方で、現代は(先の)テクノストレスに代表される”目に見えにくい”ストレスの増加で、ストレスの発見が遅れてしまい、早めの対処ができにくい状況となりつつあります。その対処の遅れが、精神障害等の件数増加に繋がっていると考えられます。
言うまでもなく、ストレスを自覚する程度には個人差があります。ストレスをあまり感じない方もいれば、いつも強いストレスを感じている方もいます。先のストレスチェックで当てはまる項目があった方は、「自分は大丈夫かな?」と今一度自分に問いかけてみると良いでしょう。
いずれにしても、ストレスを感じたら、できるだけ早く、適切な防御反応を取ることが重要です。
疲れを感じたら、まずは十分な睡眠を取って身体を休める。規則正しい生活を心がけてリズムを整える。趣味やスポーツなどで発散するのもいいとされています。
つい、お酒で憂さ晴らしをしてしまいがちですが、信頼できる方に相談するツールとしてお酒を活用するなど少しずつ行動を変えていくと良いでしょう。
最後に
ストレスは誰にでもあります。”自分だけ”と一人で悩まず、周囲の方に思い切って相談してみましょう。内容によっては、気のしれない第三者の方が話し易いこともあります。今やオンラインで自宅に居ながら相談できる時代です。足を運ばずとも、PCやスマホ一つで相談ができます。ぜひ、ご活用ください。
また、孫子の兵法書の一節に、「彼を知り、己を知れば百戦殆うからず」という言葉があります。”敵も味方も把握していれば、何度戦っても敗れることはない”という意味です。このように、自分自身の価値や外(の環境)を知るというのも有効な手段です。
自分自身を見つめ直すことで、自分の価値を最大限発揮できる会社に巡り会えたり、他社を知ることで、相対的な優位性に気づき、今の環境で「もう少し頑張ってみよう!」と奮起するきっかけになることもあります。
この記事が、もう一度立ち上がる活力になれば幸いです。