誰しも、生まれながらに「他者に認められたい。」という”承認欲求”を持っています。自分が誰かに必要とされることで、自分の価値を実感したいと思うが故の心理です。
承認は、一般的には外的な報酬で、”外発的動機”に分類されます。「褒められたいから頑張る。」ということです。ただ、承認の仕方によっては、”外発的動機”を”内発的動機”へと移行させることもできます。”内発的動機”は、自らの信念を原動力とします。
「自分自身で目標を定め、それに向けて計画を立て、完遂する。」そんな人を育てることができるという訳です。
そんな”内発的動機”への架け橋ともなる”承認スキル”をこれから学んでいきましょう。
承認とは何か?
【承認】
以下について、相手に”言葉”で伝えること
- 相手の行動。
- 相手の結果。
- 相手の存在。
全ての行動に、必ず結果がついてくるとは限りません。
結果が出てなくても、その“行動”や“存在”を承認されることで、昨今、組織で大事とされる、心理的安全性を作り出すことができます。
日本の組織では、“以心伝心”という言葉もある通り、
- 「言わなくても伝わっているだろう。」
- 「きっと分かってくれているはずだ。」
と判断してしまう傾向がありますが、意外と伝わっていないものです。まずは、言葉に出してみるところから、始めていきましょう。
承認する3つの視点
それでは、具体的に”何をどう承認するか”について、詳しく見て行きましょう。
- 行動の承認:小さな変化や成長を伝える
例)「会議で発言する回数が増えたね。引き続き、よろしくね!」 - 結果の承認:事実を伝える
例)「今月、報告書2件発行。よくやったね、ありがとう!」 - 存在の承認:その人の姿勢や視座を伝える
例)「いつもお客様のために、奮闘してくれてありがとう!」
何気ないことでも、まずは伝えることを心がける。仕事だから結果を出して当たり前と思わずに、改めて言葉にする。そして、その人そのものを承認することが大切です。そして、これらを実践していくには、常日頃から相手をよく観察することが必要になります。
行動の裏を読むテクニック(上級者編)
誰しも行動の裏には、その人の”意図”があります。行動からその意図を読み取ることで、姿勢・視座の承認につなげることができます。
例えば、「素早く議事録を書いてくれてありがとう!」は、行動の承認です。この行動の裏にはどのような意図が考えられるでしょうか?
- 議事録を書く行為:会議に参加できない誰かのための行動
- 素早く書く行為:時間や効率を意識した先読みの行動
自分に何が出来るかを考えて、最善の行動を選択しているという姿勢・視座があるとも言えるでしょう。これを踏まえて、こう伝えられたらどうでしょうか?
「いつも先を見越して、自分の出来ることをやってくれて、ありがとう!」
行動そのものを褒められる以上に、モチベーションが上がりませんか?
ひょっとすると、当の本人も自覚していない場合もあるため、“言葉”で伝えることで、認識させてあげる効果もあります。それにより、その姿勢を他のことにも生かすなど、相乗効果も期待できます。
承認の伝え方
伝え方については、「Youメッセージ」と「Iメッセージ」があります。
相手を主語として伝える方法
-
- 「Aさん、頑張ってるよね。」
- 「Bさんプレゼン、上手いね。」
どのような印象を受けるでしょうか?
言われたこと自体は、嬉しいと思います。ただ、一方的な評価であるため、言われた相手や状況によっては、素直に受け取りづらいこともあるかと思います。
そういったことを避けるために大事なのが、Iメッセージという伝え方です。
自分を主語として(考えや気持ち、相手の言動から受けた影響を)伝える方法
-
- 「Aさんの頑張りにすごく助けられました。」
- 「Bさんのプレゼンは見習う所があって、すごいと感じました。」
あくまでも、本人が感じたことを相手に伝えているので、Youメッセージに比べて、素直に受け取り易いのではないでしょうか。
加えて、相手に対して耳の痛いこと(ネガティブフィードバック)を伝える時にも、Iメッセージは有効です。
Youメッセージ
「B社の件ダメだよ、もっとちゃんとやらないと!」
Iメッセージ
「B社の件がこのような結果になって、自分としても残念だよ!」
Youメッセージの方は、一方的に怒られた印象ですが、Iメッセージでは、「申し訳ないことをしたな・・・次は何とかやりきらないと!」というように自主的な改善を促す効果があります。
このように、承認を伝える時や耳の痛いことをフィードバックする時には、このIメッセージを活用してみましょう。
当たり前のことを当たり前にやるだけ
どうでしたでしょうか?
当たり前のことでも、相手にいい影響を与えるということを再確認していただけましたか。
振り返ってみると、忙しかったり、自分にゆとりがなかったりすると、その当たり前のことを二の次にしてしまうことも、あったのではないでしょうか。
自分を大切にすることはもちろんではありますが、「相手と真剣に向き合う」というスタートラインに立つ所から始めてみてはいかがでしょうか。
人はタイミングによっては、結果が出しにくいこともあります。
そんな時こそ、そこにいるという存在を認める。
すると、相手の心はスッと軽くなるはずです。
誰にでも、きっと見つかります。
以上が、承認になります。
ほんの少しの心がけで関係性は劇的に変わるので是非活用してみて下さい。